医療関係者の皆様

エンゼルケアの手順
医療におけるエンゼルケア(死後の処置)の実際

ご準備いただくもの

(1)廃棄物処理用のプラスチック袋
(2)鋭利物の廃棄に必要な耐貫通性の容器
(3)温湯又は微温等、消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム液)
(4)【処置に必要な物品】
青梅綿 / 脱脂綿 / 高分子吸収剤 / 使い捨てピンセット又は割り箸 / 紙おむつ / タオル / ガーゼ / 防水性ドレッシング材 /
テーピング粘着テープ / 防水シート
(5)浴衣、シーツ
(6)ディスポーザブル手袋、プラスチックエプロン

高分子吸収剤
紙おむつや生理用ナプキンの中に挿入されている、顆粒又は粉末タイプの中間原料(中間原料そのものの使用が望ましく、顆粒・粉末タイプは安価で経済的です)。
連続する出血に対しては、多量に挿入する必要があります。使用量を多くすることで血液・体液を多量に吸着することが可能です。
鼻腔・口腔のほか、解剖後の処置やドレーン抜去部、気道切開痕等の詰めものを行う際に有効です。


一般的な手順

お体の状態によりエンゼルケアの手順は異なります。ここでは一般的な手順についてご説明いたします。

(1)医療器具の抜去及び介助
(2)医療器具抜去後の処置

【注射針痕】
ガーゼを当て防水性のドレッシング材を貼る。または、ガーゼを用いて圧迫固定を行う。
急速な薬剤投与が行われた場合、注射針抜去後血液をしぼり出した後に圧迫固定し、防水性のドレッシング材を貼る。

【分泌物の吸引】
気管切開痕、ドレーン抜去痕は十分吸引した後、高分子吸収剤または、青梅綿・ガーゼを詰め縫合する。
傷にガーゼを当て防水性のドレッシング材を貼る。
切開痕周囲の懐死等により縫合が不可能な場合は、ガーゼを用いて圧迫固定した後、防水性のドレッシング材を貼る。

【防水性のドレッシング材使用時の注意】
医療器具抜去部から体内ガスが放出するため、ドレッシング材と皮膚との隙間ができないように密着させる。
ほんの少しの隙間からでも血液が流出し、着衣や寝具を汚染する。

(3)創傷部位の手当

褥瘡など湿性の体液及び膿のある創傷部は、十分なガーゼをあて防水性のドレッシング材を貼る。
広域に及ぶ深い褥瘡の場合は、次亜塩素酸ナトリウム液0.5%(5,000ppm)を用いて体液・膿等をかき出した後、 ガーゼまたは、ペーパーで水分を十分取り除き、ガーゼを詰め、防水シートやフラット型紙おむつを使用する。

(4)排泄物の処理

胃内容物及び排泄物を排出する。
排出後、排泄物が付着している場合は、消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム液0.1%《1,000ppm》)で清拭する。
搬送時の振動を考慮して、紙おむつをあてる。

(5)口腔ケア

次亜塩素酸ナトリウム液0.5%(5,000ppm)を用いて口腔の消毒を行う。
口腔にガーゼを入れ十分な量の消毒剤で口腔を満たす。
舌、歯、歯茎、口蓋、頬(口腔の側壁)、口底を、先に入れたガーゼを用いて洗浄消毒する。
ガーゼを用いて口腔内の汚れと汚染した消毒剤を取り除く(口腔内の水分を十分取り除く)。
死後処置としての口腔消毒には、腐敗抑制、口臭除去効果がある。次亜塩素酸ナトリウムの臭気は、40分ほどで消失する。
口腔粘膜や消化管等の出血時には不可欠な処置である。

【次亜塩素酸ナトリウム液の使用時の注意】
次亜塩素酸ナトリウム液には、漂白効果があるため、襟もと等への消毒剤の跳びはねに注意する。

(6)腔部(鼻、口、耳、肛門、膣)の詰めもの

【鼻腔・口腔】
出血傾向、全身性浮腫がある場合は顆粒または、粉末状の高分子吸収剤を挿入する。
挿入手順は、顔と顔側面に防水シートを当て体位を側臥位にし、血液・体液を排出した後、 体位を戻し、脱脂綿を用いて鼻腔・口腔内に残留する血液・体液を取り除く。
鼻腔・口腔内に残留する血液・体液を取り除いてから高分子吸収剤と脱脂綿を詰める。
高分子吸収剤がない場合は、青梅綿と脱脂綿を使用する。枕を外して行うと詰めものがしやすい。

病院から帰宅後に鼻・口から血液・体液が流出していることがある。高分子吸収剤、脱脂綿の挿入方法を学習し、適切な処置が行われることが必要である。

(7)全身清拭

家族や第三者が帰宅後、ご遺体に直接接触する状況を考慮して全身の清拭を行う。
通常は微温等(30~40℃)で清拭する。
感染症疾患である場合や、目視で湿性の血液・体液・排泄物等が付着している場合は、 次亜塩素酸ナトリウム液0.1%(1,000ppm)で消毒後、微温等で清拭する。
着衣やシーツ汚染がある場合は交換する。

(8)着衣の装着

和服の場合は、帰宅後ドライアイスによる冷却を考慮して帯は結ばない。
全身性浮腫が発現している場合は、着衣装着時に防水シートを身体の下に敷き込む。
時間の経過とともに身体に貯留する体液が下方へ移動するため、水疱を形成し体液が流出する可能性がある。

(9)容姿を整える

櫛を入れ、髪を整える。
長期間外していた入れ歯は、再び装着しても歯茎が退化しているため合わないことが多い。
その場合は含み綿で歯のない部分を補正し整える。


注意事項

・死後処置に携わる看護師等は、ディスポーザブル手袋、プラスチックエプロンを着用する。
・作業終了後使い捨て手袋を外した後は、状況に応じた(日常手洗い、衛生的手洗い)十分な手洗いをし、手を乾燥する。


参考

ご遺体とご遺体周辺環境の消毒には、次亜塩素酸ナトリウムを用いてください。次亜塩素酸ナトリウムを使用する理由を以下になります。
現在、わが国で使用されている主な消毒剤は、医療用医薬品として成分的には8種類ある。消毒剤を選ぶ基準は2つある。

(1)消毒剤が目的とする微生物に対して効力があるかどうか(抗微生物スペクトル)
(2)消毒剤が消毒する対象物に対して適応があるかどうか(消毒剤の適応対象)である。

次亜塩素酸ナトリウムは、すべての微生物に抗微生物効果があり、すべての対象物に使用できる。
有機物と反応すると食塩(NaCl)に変化し無害化する。環境に対しても問題のない消毒剤である。また、他の消毒剤に比べて安価である。

感染予防対策上の死後処置の詳細は、下記の文献を参照ください。
「遺体に携わる人たちのための感染予防対策および遺体の管理」
医事出版社 ICHG研究会編


セミナーでいただいた看護師の方からのご疑問、エンゼルメイク業務での体験を基にした、
コラムを掲載しております。お時間のよろしいときにご覧いただければ幸いです。


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