コラム 死後処置(エンゼルケア)の手技

詰めものをする?しない?
エンゼルケア(死後の処置)への疑問

看護師の方から「詰めものをするべきか?」というご質問をいただくことがあります。
エンゼルケアの講習会に色々参加したが、「(体液・血液等が)出ないのだから詰めものはしなくてもよい」「してもどうせ出てくるのだからしなくてしなくてもよい」「出るからするべきだ」と、講師によって考えがまちまちで、情報をどう整理してよいのかわからないといった内容です。

鼻腔・口腔の詰めものを考えていただくために、体液の流出についてお話します。
鼻・口から体液が流出する可能性があるのは、全身性浮腫が発現している場合です。全身性浮腫による体液の流出は、時間が経過してから起こり、鼻・口から流れ続けます(早い人では、病院から搬送中に流れ出ます)。
全身性浮腫の場合には、死後体液の移動が起こり、体に溜まった体液が気管・消化管へ滲出します。気管・消化管へ滲出した体液が鼻腔・口腔から溢れてくるのです。体液の流出は、一過性ではなく連続的で長時間出続けることがあります。気管・消化管への体液の移動は、大量の水分が全身に貯留している場合に限って起こります。出血傾向がある場合は、時間経過とともに、体液の他に血液の流出が起こる場合があります。

エンゼルケアを行う際、気管・消化管の血管破裂による出血のように、実際に死亡時に流出があれば手当ての必要性が分かりやすいのですが、時間が経過してから起こる現象については、医療者の方々には理解しにくいことだと思います。
しかし、死後の体液の流出は、延命的医療が生み出した現象であることは否めません。患者様の体に注射針痕を残しているように、医療器具抜去痕を残しているように、医療は体液が流出する病態を残しているのです。

エンゼルケアを考える際に最も大切なことは、帰宅後のご家族の感染を予防するために行う医療業務だということです。目に見えて起きている事象に対しての処置は対処的処置です。感染予防としての死後の処置は、感染が起こる可能性に対して未然に防ぐための予防的処置です。対処的処置ではなく、予防的処置という考え方の元にエンゼルケアを適切に行うことで、ご家族の安全、死者の尊厳は守られるのです。
詰めものをするかどうかは、対処的処置と予防的処置のどちらを選ぶかという問題です。情報の整理に多少でも参考にしていただければ幸いです。

感染予防対策上のエンゼルケアの実践には、注射針痕は閉じない、縫合しても皮膚はくっつかない、体液が移動するなど死後の体の変化を理解し、エビデンスに基づいた死後処置の手技を学習することが必要です。


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