コラム 死後処置(エンゼルケア)の手技

吐血があった場合の処置

【医療機関での死後処置について】

医療機関における死後の処置は、家族や第三者が帰宅後ご遺体に直接接触する状況を考慮して、病状や医療行為に応じて適切に行うことが望まれます。食道静脈瘤の破裂や食道がんなどによって食道に血液が流出している場合は、搬送時の振動や体内ガスの放散によって、帰宅途中や帰宅後時間が経過してから、口腔から血液が流出することがあります。吐血がある場合の死後処置の手順を以下に記します。


1.血液を吸引する
2.口腔内を消毒する

消毒剤は抗微生物スペクトルを適用し、次亜塩素酸ナトリウム液0.5%(5,000ppm)を用いる。雑貨として市販されているハイター等の塩素系漂白剤には、ピューラックスと同量の次亜塩素酸ナトリウムが含有されているので、経済性を考慮しハイター等を用いてもよい。(ラベルに次亜塩素酸ナトリウムの表示を確認すること)

3.口腔、鼻腔に高分子吸収剤を挿入する
4.脱脂綿を口腔、鼻腔に固く詰める
5.顔などの清拭をする

口腔、鼻腔周囲等に血液が付着している場合は、次亜塩素酸ナトリウム液0.1%(1,000ppm)で消毒後、微温湯(30~40℃)で清拭する。

【ポイント】
吐血がある場合の死後処置のポイントは、血液の吸引を行うことです。医療機関の手を離れた後、出血個所からの出血量は予測できません。また、シリンジを用いたゼリー状の高分子吸収剤1回分ではその後流出する血液を吸着しきれないことが起こるため、吸引の必要性があります。

【注意】
高分子吸収剤を挿入したのち、脱脂綿を固く挿入してください。血液を吸着した吸収剤が体内ガスに押し上げられ、口腔から出てくることがあります。


【葬祭業従事者が行う死後処置について】

葬祭業従事者等は、医療における守秘義務によって病名は知らされません。また、知らされたとしても患者さんの保有するすべての病原体が判明するわけではありません。死後処置を行う場合は、血液・体液・排泄物等は感染の可能性があるとして取り扱い、感染予防対策の実施が必要です。感染予防対策は、医療に準じ標準予防策を実施します。口からの出血を止血する死後処置の手順を以下に記します。

■感染予防対策
ラテックス製のディスポーザブルグローブを2重にして着用します。血液が服を汚染しないようにプラスチックエプロンを使用します。作業終了後は、液体せっけんと流水を用いて十分な手洗いを行い、手を乾燥させます。


1.ご遺体の脇腹を下にして傾け、血液を排出する
血液で周囲を汚染しないように、ご遺体を傾ける前に紙おむつで顔を覆う。覆った状態でご遺体を傾ける。傾けると、血液が紙おむつに流れ出し紙おむつ内の高分子吸収剤が血液を吸着する。胃の部分を圧迫し血液を排出する。

2.ご遺体を仰向けに戻し、口の中を消毒する
脱脂綿を用いて口の中に残っている血液を取り除いたのち、消毒する。消毒には、雑貨として市販されているハイター等の塩素系漂白剤を用いる。ハイター: 水=1:9の割合で、次亜塩素酸ナトリウム液0.5%(5,000ppm)を作る。(ラベルに次亜塩素酸ナトリウムの表示を確認すること)

3.高分子吸収剤を喉と鼻の奥深くに挿入する
高分子吸収剤がない場合は、青梅綿を使用する。

4.脱脂綿を喉と鼻の奥に固く詰める
5.顔などの清拭をする

高分子吸収剤を挿入したのち、脱脂綿を固く挿入してください。血液を吸着した吸収剤が体内ガスに押し上げられ、口腔から出てくることがあります。

【ポイント】
ディスポーザブルグローブを2重にすることが感染予防対策のポイントです。葬祭業従事者等は医療従事者と異なり、作業終了後ただちに消毒剤を用いた手洗いができないため、グローブを2重に使用する、血液がグローブに付着したらすぐにグローブを取り換えるなどして、感染リスクを低くして業務を行います。


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